症例紹介
CASE
- 2024.12.7
No.286外科症例(犬、脾臓のリンパ腫、精巣のセルトリ細胞腫、再生医療・キラー細胞療法)
定期検査で偶然に脾臓のできものが見つかり、手術を行った症例です。未去勢の13歳の柴犬です。
エコー検査で脾臓に2cm程度のできものが見つかりました。脾臓にも様々な種類のできものが出来ます。一般的には脾臓に何かしらの腫瘤(できもの)が見つかったとき、3分の2の症例で腫瘍と言われており、さらにその中の3分の2の症例は血管肉腫とされています。また、脾臓は血液豊富な臓器であるため、腫瘤が破けて自潰してしまうと大量出血を招き、最悪のケースだと数時間以内に命を落としてしまうこともあります。
そのため、本症例には目立った臨床症状はありませんでしたが、積極的に手術で脾臓摘出することになりました。
下の写真は摘出した脾臓です。脾臓が全体的に赤黒く、少し見えにくいですが、ポコっと大きく膨れていることが見て取れます。
本症例では、院内での身体チェックで左右の精巣の大きさが異なっていたため、脾臓摘出手術と同時に精巣も摘出しました。これについては飼い主さんも気付かれておらず、獣医師から大きさが違うことをお伝えすると「言われてみれば、最近よく股を舐めていることが多かった」と仰っていました。いかんせん普段見えにくい部位ですので、わかりにくい変化ですよね。
手術で摘出した脾臓、精巣ともに病理組織学的検査を行いました。その結果、脾臓は悪性リンパ腫、精巣はセルトリ細胞腫でした。幸い、両臓器とも腫瘍は取り切れていると検査が出ました。
犬のリンパ腫は、造血器腫瘍の中で最も多く認められる腫瘍です。様々なタイプがあり、その中でも最多なのが多中心型リンパ腫で、首元(下顎リンパ節)や膝の裏(膝窩リンパ節)や脇の下(腋窩リンパ節)など、あちこちの体表リンパ節が大きくなってきます。リンパ腫でも今回のように脾臓に出来るケースは比較的まれなケースとされています。
セルトリ細胞腫は、精細管という構造を支えている細長い細胞が腫瘍化したものです。セルトリ細胞は、エストロゲンという女性ホルモンを産生するため、セルトリ細胞腫の子の中には、雌性化や骨髄抑制を伴う子もいます。潜在精巣の症例で起こりやすいと言われている腫瘍ですが、本症例のように、正常に精巣下降が済んでいる子にも発生することがありますので、去勢手術をしていないオスは注意が必要です。
持病で腎不全を抱えている子でしたが、手術後も腎不全は良好にコントロールでき、無事退院となりました。手術で腫瘍細胞は取り切れていると診断がくだりましたが、念のため再生医療の一種であるキラー細胞療法をスタートしています。2週間ごとのキラー細胞療法もいつもお利口さんで協力してくれています!あともう少し治療が続きますが、みんなで一緒に頑張りましょうね!
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