症例紹介
CASE
- 2026.5.23
No.313外科症例(14歳犬、皮膚肥満細胞腫、脾臓の腫瘤)
皮膚にできものが出来たという主訴で来院した14歳のシニア犬です。
細胞診検査(さいぼうしん)を行ったところ「肥満細胞腫」と結果が出ました。細胞診検査とは、注射の時に使うような細い注射針をできものに刺して細胞を吸引し、その細胞を顕微鏡で観察する検査する方法です。局所麻酔も不要でペットちゃんの身体にも負担なく、診察室内で手軽にできる検査です。その一方で、得られる細胞数に限界があったり、組織全体の構造(できものがどこまで波及しているか、周囲への組織の構造に影響がでていないか等)が確認できないため、確定診断には至りません。
肥満細胞腫とは、体重や脂肪など太っているかどうかとは関連はなく、肥満細胞と呼ばれるアレルギーなどに関連する細胞が腫瘍化してしまう病気です。見た目だけでは良性のイボや過形成とは区別がつきません。悪性度に幅があり、周囲の組織に浸潤したり(根を張るように広がること)、他の臓器へ転移する性質があります。基本的には、見つけたら早期に、大きく手術で取り切ることが第一選択になります。
肥満細胞腫の切除手術を安全に行うために、術前検査として血液検査、レントゲン検査、エコー検査を行いました。その際の腹部エコー検査で、脾臓に5cmの大きな腫瘤が偶発的に見つかりました。脾臓の腫瘤は大きくなると、自潰といってできものが破裂してしまうことがあります。破裂すると急性に大出血が起こり、命の危険にさらされてしまう怖い病気ですので、脾臓摘出術も同時に行うことになりました。
お腹を開けて、できものごと脾臓を切除しました。脾臓の腫瘤は一部、自潰ぎりぎりの状態でした。手術中に患部に少し指が触れるだけでも血がジワジワと滲み出るような状態でした。どうやら自潰するまではあまり時間が残されていなかったようです。発見してから迅速に手術ができたので、本当に良かったです。万が一、手術までの間に脾臓の腫瘤が破けていたらと思うとゾッとします。飼い主さまにすぐに手術をお決めいただけたことで、発見した翌日には手術できたことが幸運でした。


皮膚の肥満細胞腫はマージンを3cm取り、できものよりもかなり大きく切除しました。「一見すると正常に見えるけれど、目には見えない細胞レベルで周囲の組織にがん細胞が存在していること」は多くあります。そのため、できものよりも大きく、しっかりと余裕を持って切除すること(マージンを確保すること)は非常に重要です。
今回は思ったより大きな手術を受けることになってしまいましたが、シニアさんでも術後2日後には元気に退院となりました。入院中もフードをよく食べ、のびのびと過ごしてくれていました。よく頑張ってくれました!
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