症例紹介

CASE

  • 2019.8.16

No36.外科症例(犬、自潰した乳腺腫瘤)

今回の症例はセカンドオピニオンの症例です。以前から乳腺腫瘤(しゅりゅう:できものの事です)があり、他院を受診していましたが、年齢を理由に治療や手術は必要ないと言われていたという高齢の犬です。そのまま様子を見ていたそうですが、腫瘤がとても大きくなってしまい、いよいよ皮膚がはじけ、自潰してしまったという主訴で初診で来院しました。

自潰したところはぽっかり大きな穴が開いていて、膿が見えています。このような状態は本人も辛いですし、また自潰した部分からは絶え間なく血や膿が流れ出てくるため、お家でお世話している飼い主さんの負担もかなり大きくなります。また、夏場にはウジの沸くリスクもかなり高くなってしまいます。

また、自潰している腫瘤以外にも複数乳腺腫瘤が認められました。他の腫瘤もかなり大きく迫り出しています。

このような背景から乳腺腫瘤の切除手術を行うことになりました。腫瘤を完全に切除して完治を目標とするには、一般的に犬に5対ある乳房を全て取り除く乳腺全層切除が必要となります。しかし、この症例の場合は、腫瘤があまりに大きくなりすぎてしまい物理的にマージン(腫瘤は目に見えない細胞レベルで周囲に増殖するため、見てわかる腫瘤よりも半径3センチすつ大きく切除することが推奨されています。)が取り切れない、さらにそれが左右に存在するため、残念ながら積極的な手術は選択できませんでした。

そこで、今回は腫瘤の「自潰のコントロール」と「本人の生活の質(医学用語でQOLと言います。)を上げる」ため、できる限り広範囲に乳腺腫瘤の切除することを目標として手術を実施しました。

目に見える腫瘤は全て摘出し、本人も元気に退院しました。重くぶら下がっていた腫瘤がなくなり、術後はすごく快適に過ごせるようになり、無事お家でものんびり過ごせるようになりました。

今後はキラー細胞療法(再生医療の1種で、キラー細胞と呼ばれる体の細胞を増やし、腫瘍細胞を少なくしていく治療法です)など、追加の抗腫瘍治療を行い、少しでも長い期間この子が穏やかに生活できるように治療を進めていきます。

 

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