症例紹介
CASE
- 2018.7.31
誤食に注意!
当院では、このところ誤食の症例が急増しています。誤食の中でも、ボールやお菓子の袋などの異物を食べてしまう場合と、チョコレートや有毒植物などの有毒成分を食べてしまう場合で、話は大きく変わってきます。
今回は、異物についてお話ししたいと思います。
<よく見かける異物>ボール/ぬいぐるみ/串、アイスの棒/フルーツの種(桃、柿など)/トウモロコシの芯/タオル/靴下、手袋/石/ルアー/お菓子の袋/薬のシート/保冷剤/画鋲、針/ペットシーツ/ペットボトル、蓋/ピアスなどのアクセサリー/電池など
←腸の中に詰まっていたトウモロコシの芯。手術で摘出しました。
←胃の中にあったプラスチック片。お留守番中、ガリガリ砕いて遊んで食べてしまいました。表面が鋭利だったため、内視鏡検査では重度の胃の炎症が確認されました。
<症状>食べ物以外を食べてしまったことにより、吐き気や食欲不振などの症状が出てきます。異物はいつまで経っても消化されず、長い期間お腹の中に存在し、影響を及ぼします。胃の中に留まることで胃潰瘍になったり、その先の腸で閉塞を起こしたり、ひも状のものや鋭利なものでは穿孔を起こして胃や腸に穴が開いてしまったり、と個々の症例によって、どこでトラブルになるかは大きく異なります。発見が遅れた場合には、命を落としてしまうこともありますので、注意が必要です。
誤食のトラブルでまず重要なことは、とにかく「予防」することです!
ポイント①:異物の誤食はどんな子にも、そしていつでも起こり得るという認識が必要です。私が飼っている犬も14歳の老犬ですが、今でもいたずらが大好きで、口に入る物はなんでもかんでも食べようとしてしまいます。異物=若い動物のトラブル、と思われがちですが、あくまでその子の好みによるので、まずは常に注意をしておく「心構え」が重要です。
ポイント②:少しでも食べてしまう恐れのあるものは置いておかない。中には、ゴミ箱を漁ってしまったり、棚から引っ張り出して食べてしまうこともあるので、しまう場所も注意しましょう!ゴミ箱を蓋つきのものや背の高いものにしたり、それでもイタズラしてしまう場合には、ゴミ箱ごと棚にしまうことも必要かもしれません。焼き鳥の串やフルーツの種、お肉の骨、お菓子の袋や容器などを捨てたときは、普段イタズラしない子でもいじってしまうことも多いので、特に注意しましょう!
ポイント③:おもちゃは、強度に注意して安全なものを選びましょう!ロープ状のおもちゃのヒモを引きちぎって食べてしまったり、ボールを丸呑みしてしまったり、プラスチックをボロボロにして食べてしまう例が多く見られます。猫の場合は、釣竿のようにおもちゃが先についていてしてプラプラ動かして遊ぶおもちゃを丸ごと飲んでしまった子もいます。遊んでいる間にだんだんと強度が弱くなってしまっていることもあるので、購入するとき以外にも、定期的にチェックするように心がけましょう!
ポイント④:デンタルガムや牛皮のおやつなども異物になることがあります。大きさや硬さに注意して選びましょう。
ポイント⑤:お留守番中は、なるべく物を置かない。最小限にする。この夏も、お留守番中に、ペットボトルの蓋やペットシーツを食べてしまった子がいます。時間がたっぷりあるので、異物トラブルが起こりやすいタイミングですし、また帰宅してみないとわからないので、多くの症例で長時間経ってからの発見になってしまいます。異物の場合、食べてからの時間も治療に関わりますので、充分気をつけましょう。
気をつけていても、もし食べてしまったら。。。
とにかく、「すぐに」来院してください。食べてからまだ間もない時間であれば、特殊なお注射で吐かせる処置が出来るかもしれません。大丈夫かなと思って様子を見てしまうと、異物が吐けない位置まで移動してしまう恐れがありますので、時間との勝負です。ご自宅に、食べてしまった異物の一部が残っていたり、同じ製品を持っている場合は、来院時にご一緒にお持ち下さい。
また、中には、受診までの間に吐いて異物が出てくることもあります。その際、食べた量が全て出てきたかどうかが、非常に重要なポイントになります。全部が出てきてくれれば、とってもラッキーです!ただ、もしお腹の中にまだ異物の一部が残っているようであれば、やはり受診が必要ですので、出きたものは必ず量を確認しましょう。便の中に、異物が出てきたときは、袋に便を入れ指で押しつぶして確認しましょう。見た目だけではわからないことも多くあります。もし吐物や便に異物が入っているかわからない場合は、お持ちいただければチェック致します。
吐かせる処置が不適応の場合は、内視鏡を使い異物を取り出したり、胃や腸を開ける手術が必要になるケースもあります。どちらも全身麻酔が必要になるので、できれば吐かせて異物が取り出せると理想的です。
←内視鏡下での異物摘出。内視鏡越しに器具を入れ、カメラで確認しながら掴んで、食道を通って異物を摘出します。
内視鏡を使うと、全身麻酔は必要ですが、お腹を開けずに異物を摘出できるので、負担が大変少ないことが特徴です。日帰りも可能で、翌日からいつも通りの食餌が食べられます。また、胃粘膜の状態もチェックすることができます。
状況によっては、内視鏡での異物摘出が不適応の場合もあり、開腹手術を行うケースもあります。中には、異物を複数飲み込んでおり、あちこちで腸閉塞を起こしているケースもあります。また、何を飲んだかわからない症例や鋭利なものを飲んだ症例なども、開腹手術が適応になります。全身麻酔をかけて、お腹を開けるので侵襲性はありますが、胃も腸も全てが検査できるため、より確実な方法です。
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