症例紹介
CASE
- 2022.7.9
No163.外科症例(猫、顔面の肥満細胞腫)
17歳の猫ちゃんが混合ワクチン接種にご来院の際に、少し前からあったという左頬に出来た腫瘤の診察もさせて頂きました。
注射針をさして、採取された細胞を顕微鏡で観察する細胞診という方法で検査しました。
細胞診の結果で、「肥満細胞腫」を強く疑いました。
<細胞診写真>
細胞質内に多くの赤紫色の細顆粒を容れる細胞が多数認められます。これらの細胞が増殖していることが肥満細胞腫の特徴であります。
そのため、高齢ではありますが、手術を行うこととしました。
病理組織検査を行い、「肥満細胞腫」と確定診断されました。
顔面腫瘍のため、マージン(腫瘍組織からの余裕)がしっかり取れないため、抗がん剤での再発抑制をご提案しました。
飼い主様は、高齢猫であるという理由で抗がん剤投薬はご希望せず、経過観察をご希望されました。
現在、傷も綺麗に治り、食欲旺盛かつ元気に過ごしてくれています。
<皮膚肥満細胞腫とは・・>
肥満細胞腫は猫において全腫瘍の2~15%を占める一般的な腫瘍です。皮膚型と内蔵型の2つの病型があります。両者とも発生頻度はほぼ同じです。
皮膚型の肥満細胞腫は皮膚腫瘍の中では2番目に多い腫瘍です。
頭頚部に発生することが多い。
皮膚の肥満細胞腫は、脾臓の腫瘍の転移病変である場合もあるため注意が必要です。
診断・・・針生検による細胞診や病理組織検査
治療方法・・切除可能な肥満細胞腫は外科手術がもっとも重要な治療法となります。高分化型の皮膚肥満細胞腫で良好な予後が得られることが多いです。頭頚部に発生し、広範囲のマージンを含めた切除が難しいことが多く、十分なマージンを取ることが出来ない場合でも、良好な予後が得られることが多いとされています。また、外科手術が不適な場合や再発の可能性が高い場合は、イマチニブなど抗がん剤を投薬することも考えましょう。
支持療法・・猫の肥満細胞腫では、ヒスタミンによる胃十二指腸潰瘍や低血圧性ショックが問題となることがあります。そのため、ヒスタミンをブロックする薬を用いましょう。H1ブロッカー(ジフェンヒドラミン塩酸塩)やH2ブロッカー(ファモチジン)などが必要となります。
予後・・皮膚の高分化型肥満細胞腫:良好
低分化型肥満細胞腫:悪性の挙動
非定型の皮膚肥満細胞腫:自然退縮することが多い
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MORIYA Animal Hospital
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