症例紹介

CASE

  • 2020.2.16

内科症例(犬、巨大食道症)

「元々、吐きやすい子だが、最近毎日立て続けに嘔吐する」ということで飼い主様が心配され、ホテルのお預かり中に診察を行ったシニア犬です。

食欲や元気はいつも通りでしたが、お預かり中にも1日7~8回嘔吐していたため、全体的なスクリーニング検査から入りました。しかし、血液検査、レントゲン検査、エコー検査のいずれも著変はありませんでした。そこで、飼い主様の同意を得て、バリウム造影検査へと進みました。

バリウム造影検査をすると、飲み込んだはずの造影剤がずっと食道の中に滞って、胃へ進んでいかない状況でした。5分バンザイの体勢で立たせてみると、重力の力を借りて、造影剤が多少胃へ流れていきました。さらに5分その体勢をつづけるとさらに造影剤も胃に流れ込んでいきます。

検査結果から、食道の筋肉が弛緩(ゆるんでしまうこと)し、食道から物が進んでいかない「巨大食道症」という病気であると診断しました。

巨大食道症を発症すると、食道から先に物が進みにくいため、何かの拍子にそれを吐き出す「吐出」が見られることが一般的です。吐出と嘔吐は、「物を口から吐き出す」という点では似ていますが、胃に到達する前の物を吐き出す(=吐出)か、胃に入った物を吐き出す(=嘔吐)か、大きな違いがあります。吐出の場合は、溜まっていた物が物理的に出てしまうだけなので、ムカムカするような気持ち悪さ(悪心)がありません。

一般的に、巨大食道症の原因として、甲状腺機能低下症や 重症筋無力症などが言われています。精査を進めましたが、本症例はいずれの検査も正常でした。そのため、「特発性巨大食道症」と診断が下りました。特発性とは、「特に原因となるものがない」という意味です。

診断以降、テーブルフィーディングという方法で食餌を摂るようにしたところ、食餌を吐き出す頻度がグッと減りました。テーブルフィーディングとは、テーブルの上に食餌を置いて、後肢だけで立ちながら食餌を摂る方法です。食道が動かず、食べ物が胃に流れていかない子も、重力を利用して食道から胃への流入を促進します。

食後も15~30分、体が縦になるように抱っこしてもらい、吐出を防止します。

 

病気の診断がつき、普段の生活を少し工夫するだけでも、見違えるほど症状が落ち着きました。今後は、誤嚥に気をつけて生活していきましょう!

 

 

 

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