症例紹介

CASE

  • 2021.10.23

No128.外科症例(犬、胆嚢破裂における胆嚢摘出術)

犬、12歳、キャバリアの症例報告です。

前日に数回嘔吐をしたとのことで来院されました。体温は35.7度と重度に低体温の状態でしたが、ワンちゃんは起立や歩行が出来る状態でした。もともと食欲旺盛だが、本日は食欲がないとのことでした。以前、膵炎を患った経歴があったため、膵炎検査を含めた血液検査、レントゲン検査、超音波検査を実施しました。

黄疸が見られ、肝酵素が急激に上昇していました。また、白血球増加やCRP上昇が見られたため、全身性の炎症疾患が示唆されました。膵炎は陰性でした。

超音波検査にて、胆嚢粘液嚢腫様所見が認められました。また、腹腔内(腎臓より頭側、脾臓より尾側)に腫瘤病変が見られました。少量の腹水が認められ、腹腔内の脂肪組織は高エコー化していたため、腹膜炎を疑いました。

 

以上の結果を踏まえて、胆嚢破裂を疑い、飼い主様には手術をご提案しました。ただし、体温が35.7度と重度の低体温であったため、手術のリスクがかなり高いことをご理解いただきました。また、術後の合併症のリスクも説明しました。

飼い主様のご理解の元、緊急手術を行うこととなりました。

開腹手術の結果、やはり予想通りの「胆嚢破裂」であったことが判明しました。腹腔内には胆汁が漏れ、腹膜炎所見が認められました。超音波検査で中腹部に認められた腫瘤は、固まった胆汁の一部であることも確認できました。

 

「胆嚢粘液嚢腫」とは、何らかの原因で胆嚢の中にゼリー状の粘液物質(ムチン)が貯留した状態をいいます。胆泥症 から胆嚢粘液嚢腫になる事もあります。 胆嚢内の胆汁が固形化した場合、胆汁の排出に異常が出ます。最終的には、黄疸 や胆嚢破裂に伴う腹膜炎などの重篤な合併症を引き起こし、危険な状態に陥ります。

  

胆嚢破裂から胆汁性腹膜炎に陥ると、 周術期死亡率は40%以上と報告されています。

そのような危険な状態でしたが、キャバリアちゃんは手術も無事に成功し、元気になりました。

 

当院では胆石や胆嚢粘液嚢腫が認められる場合には胆嚢破裂を起こす前に 予防的胆嚢摘出術 を推奨しています。

 

 

 

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MORIYA Animal Hospital
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